投資信託は買うときより、売るときのほうが悩みやすいものです。特に資産が増えてきた後は、「いま売るべきか」「まだ持つべきか」で迷いやすくなります。判断しやすくするには、よくある迷いどころを先に整理しておくことが大切です。

売るタイミングは「相場」だけで決めにくい

投資信託の売却で難しいのは、相場の天井や底を正確に読めないことです。今が高いのか、まだ上がるのかは、後にならないと分からないことがほとんどです。そのため、「もう十分上がった気がするから売る」「少し下がったから不安で売る」といった感覚だけで判断すると、結果が安定しにくくなります。売るタイミングを考えるときは、相場予想よりも、何のためにそのお金を使うのかを先に整理したほうが判断しやすくなります。

取り崩しは一括売却だけではない

投資信託を使う場面になると、すべて売るか、そのまま持ち続けるかの二択で考えがちです。しかし実際には、必要な分だけ部分的に売却する取り崩し方もあります。金融庁のNISA特設サイトでも、毎月少しずつ取り崩す場合でも、まとまった金額を用意したい場合でも、必ずしも一括で売却する必要はなく、運用を継続しながら取り崩していけると案内されています。全部を一度に決める必要がないと分かるだけでも、判断の負担はかなり軽くなります。

必要額に合わせて考える

たとえば生活費の補填として毎月少しずつ使いたいのか、住宅関連費や教育費のように一時的なまとまった支出に備えたいのかで、取り崩し方は変わります。お金の使い道を決めずに売却タイミングだけを考えると、判断はぶれやすくなります。

増えているときほど売りにくく、下がっているときはもっと売りにくい

投資信託は、含み益が大きいと「まだ上がるかもしれない」と思って売れず、逆に下がると「今売るともったいない」と感じやすくなります。どちらの局面でも決断しにくいのは自然なことです。そのため、値動きの最中に感情で決めるより、あらかじめ「どんな場面で、いくら使うのか」を決めておくほうが、迷いにくくなります。

老後資金の取り崩しは特に迷いやすい

老後資金のように長い期間で使うお金は、一度に全額使うわけではありません。そのため、「もう使う時期だから全部売る」という考え方が必ずしも合うとは限りません。使う分だけ段階的に取り崩し、残りは運用を続けるという考え方も現実的です。金融庁の活用事例でも、NISA口座の資産はライフプランに応じて部分的に売却できる前提で紹介されています。取り崩しは終わりではなく、使いながら保有を続ける考え方も選べます。

全部売ると安心、とは限らない

すべて現金化すると安心感はありますが、今後も長く使う予定の資金まで一括で現金に戻すと、その後の運用機会を失うこともあります。いつ、どのくらい使うのかが分かれているなら、資金を分けて考えるほうが自然です。

NISAでは売却後の枠の考え方も知っておきたい

日本証券業協会の案内では、NISA口座で保有する上場株式や株式投資信託等を売却した場合、その買付額分だけ非課税保有額が減少し、その減少分は翌年以降に新たな投資に利用可能とされています。つまり、売却したら制度上まったく戻れないわけではありません。ただし、その年のうちに同じ枠が即座に復活するわけではないため、取り崩しを考えるときは、制度面もあわせて確認しておくと安心です。

「何となく売る」が一番ぶれやすい

売るタイミングで失敗しやすいのは、明確な理由がないまま動くケースです。ニュースで景気後退が不安になった、急に相場が上がって怖くなった、周囲が利益確定の話をしていた。こうした外部要因だけで売却を決めると、自分の家計や目的とのつながりが薄くなります。その結果、売った後に上がると後悔し、売らなかった場合は下がって不安になる、といった形で判断がぶれやすくなります。

売る理由を言葉にできるか

「生活費として今後1年間で必要」「教育費の支払いが近い」「資産配分を見直したい」など、売る理由を自分の言葉で説明できるなら判断しやすくなります。逆に、理由が曖昧なときほど、一度立ち止まる価値があります。

取り崩しで迷いやすい人が整理したいこと

売却で迷うときは、「いつ使うお金か」「必要額はいくらか」「一括か分割か」「売った後も一部を保有するか」を分けて考えると整理しやすくなります。特に、近いうちに使う分と、まだ先まで使わない分を一緒に考えると判断が難しくなります。資金の役割を分けるだけでも、全部売るべきかどうかの迷いは小さくなります。

売るタイミングより、使い方の設計が大切

投資信託の売るタイミングは、相場を当てる発想で考えるほど難しくなります。実際には、必要な分だけ部分的に取り崩す方法もあり、NISAでもライフプランに合わせた使い方が可能です。大切なのは、上がるか下がるかを当てることより、「何のためのお金で、いつ、どのくらい使うのか」を整理しておくことです。売却はゴールではなく、資産を使う過程の一つとして考えると、判断しやすくなります。

出典:金融庁「NISAの活用事例:NISA特設ウェブサイト」

出典:日本証券業協会「人生100年時代のライフプランにNISAがいいさ!」