年金生活に入ると、夫婦で毎月どれくらい保険料を払っているのかが気になりやすくなります。現役時代に入った生命保険、医療保険、がん保険、個人年金保険などをそのまま続けていると、知らないうちに固定費が大きくなっていることがあります。
保険は、病気や死亡などの不安に備える大切なものです。ただし、夫婦それぞれが別々に加入していると、保障が重複していたり、今の家計に合わない保険料を払い続けていたりする場合があります。老後の保険見直しでは、いきなり解約するのではなく、夫婦の保険を同じ表に並べて、順番に確認することが大切です。
夫婦の保険料は世帯全体で見る
保険料を見直す時、夫の保険、妻の保険を別々に考えると、家計全体の負担が見えにくくなります。夫は生命保険、妻は医療保険、さらに夫婦それぞれががん保険や個人年金保険に入っている場合、合計すると大きな金額になっていることがあります。
生命保険文化センターの2024年度調査では、2人以上世帯における生命保険の世帯年間払込保険料は平均35.3万円とされています。これは月額に直すと約3万円です。もちろん平均より多いか少ないかだけで判断する必要はありませんが、老後家計では保険料が固定費としてどれくらい重いかを確認する目安になります。
夫婦別々の契約は重複に気づきにくい
夫婦で保険を見直す時に多いのが、それぞれの契約内容を本人しか把握していないケースです。夫は自分の生命保険しか知らず、妻は自分の医療保険しか知らない状態だと、世帯全体でどの保障がどれくらいあるのか分かりにくくなります。
たとえば、夫婦それぞれが医療保険に入り、さらにがん特約や先進医療特約を付けている場合、同じような保障が重なっていることがあります。重複していても必要な場合はありますが、保険料を抑えたいなら、まず確認したい部分です。
保険料は月額換算で並べる
保険料には、月払い、半年払い、年払いがあります。年払いの保険をそのまま見ると、毎月の家計への影響が分かりにくくなります。夫婦の保険を整理する時は、すべて月額に直して一覧にしましょう。
たとえば、年払い12万円の保険は月1万円、年払い6万円の保険は月5,000円として考えます。夫婦それぞれの保険料を月額で合計すると、年金収入に対してどれくらいの割合を保険料が占めているかが見えてきます。
最初に確認したいのは死亡保障
夫婦の保険見直しで、最初に確認したいのは死亡保障です。死亡保障は、万が一の時に残された家族の生活費や葬儀費用、住宅ローン、教育費などに備えるものです。
現役時代は、子どもの教育費や住宅ローンのために大きな死亡保障が必要だった人もいます。しかし、老後になると、子どもの独立、住宅ローンの完済、夫婦それぞれの年金などによって、必要な死亡保障額が変わっている場合があります。
子どもが独立していれば必要額は変わる
子どもが小さい頃は、親に万が一のことがあった時の教育費や生活費を考え、大きな死亡保障を持つ意味がありました。しかし、子どもが独立しているなら、その分の保障は以前ほど必要ではないかもしれません。
もちろん、死亡保障をすべてなくせばよいわけではありません。葬儀費用、残された配偶者の当面の生活費、住まいの費用などに備える意味はあります。大切なのは、現役時代の保障額が今も必要かを確認することです。
配偶者の年金と住まいを確認する
夫婦のどちらかが亡くなった場合、残された配偶者の生活費がどうなるかを考える必要があります。配偶者自身の年金、遺族年金の可能性、預貯金、持ち家か賃貸か、住宅ローンの有無などを確認しましょう。
住居費がほとんどかからず、預貯金もある程度ある場合は、大きな死亡保障を残す必要性が下がることがあります。一方で、賃貸で住居費が続く、配偶者の年金が少ない、貯蓄が少ない場合は、一定の保障を残す意味があります。
次に医療保険とがん保険を確認する
死亡保障を確認したら、次は医療保険とがん保険です。60代以降は入院や手術、がん治療への不安が大きくなりやすいため、医療保障を残したいと考える人は多いでしょう。
ただし、夫婦で似た医療保険に入り、さらに複数の特約を付けている場合、保険料が重くなっていることがあります。公的医療保険や高額療養費制度で備えられる部分と、民間保険で備えたい部分を分けて考えることが大切です。
入院日額だけで判断しない
医療保険を見る時は、入院日額だけで判断しないようにしましょう。日額5,000円、1万円などの金額は分かりやすいですが、実際には手術給付金、通院保障、日帰り入院への対応、1入院あたりの支払限度日数なども重要です。
古い医療保険では、長期入院を前提にした内容になっていることがあります。現在は、病気によっては入院期間が短くなり、通院治療が続くこともあります。夫婦それぞれの医療保険が今の医療事情に合っているかを確認しましょう。
がん保険と医療保険の重複を見る
がん保険は、がんと診断された時や治療を受けた時に給付金を受け取れる保険です。一方で、医療保険にがん特約が付いている場合、別のがん保険と一部の保障が重なることがあります。
重複しているからすぐ不要というわけではありません。がんへの備えを厚くしたい人にとっては意味があります。ただ、保険料が家計を圧迫している場合は、夫婦でどの保障を残すかを話し合う必要があります。
特約は保険料節約の確認ポイント
夫婦の保険料を見直す時、意外と見落としやすいのが特約です。主契約の保険料より、複数の特約によって月々の負担が大きくなっていることがあります。
特約には、入院特約、通院特約、災害特約、三大疾病特約、先進医療特約、介護特約などがあります。契約時には必要だと思って付けたものでも、今の生活に合わなくなっている場合があります。
不要な特約だけ外せる場合がある
生命保険文化センターでは、保険料の負担を軽くする方法として、保険金の減額や特約の解約などを紹介しています。付加している特約だけを解約することで、契約全体を解約せずに保険料を下げられる場合があります。
ただし、保険会社や特約の種類によっては、ひとつの特約だけを外せない場合や、他の特約も同時に変更になる場合があります。外した後に再び付けられないこともあるため、保険会社に確認してから判断しましょう。
夫婦で同じ特約を持ちすぎていないか
夫婦それぞれが同じような特約を持っている場合、世帯全体で見ると保障が過剰になっていることがあります。特に、通院保障や入院上乗せ特約などは、契約内容を並べて見ないと重複に気づきにくい部分です。
保険料を節約したい場合は、まず特約を確認しましょう。保障をすべてなくすのではなく、優先度の低い特約から整理すると、家計への影響を抑えながら見直しやすくなります。
貯蓄型保険は解約前に慎重に見る
夫婦の保険料が高い場合、終身保険、養老保険、個人年金保険などの貯蓄型保険が含まれていることがあります。貯蓄型保険は、掛け捨て型より保険料が高くなりやすいため、老後家計では負担に感じることがあります。
ただし、貯蓄型保険は安易に解約しない方がよい場合があります。解約返戻金、払込期間、将来受け取れる金額、死亡保障の役割を確認せずに解約すると、不利になる可能性があるからです。
解約返戻金と払込期間を確認する
貯蓄型保険を見直す時は、現在の解約返戻金、これまで払い込んだ保険料、今後の払込期間、満期金や年金の受取予定を確認します。あと少しで払込が終わる契約を解約すると、これまで続けてきた効果を活かしにくくなることがあります。
一方で、今後も長く高い保険料を払い続ける必要があり、家計が苦しい場合は、減額や払済保険などの選択肢を検討できることがあります。契約によって使える方法は異なるため、保険会社に確認しましょう。
老後資金として残す意味があるか
個人年金保険や終身保険は、老後資金や相続準備として加入している場合があります。毎月の保険料が重いからといって解約すると、将来受け取る予定だったお金や保障を失うことがあります。
貯蓄型保険は、保険料だけを見るのではなく、老後資金としての役割も含めて判断しましょう。夫婦でどちらの保険を残すのか、どの保険を生活費の補助に使うのかを整理することが大切です。
見直しの順番は保険料が大きいものから
夫婦で保険を見直す時は、すべてを一度に判断しようとすると混乱します。まずは保険料が大きい契約から確認しましょう。毎月の負担が大きい保険ほど、見直した時の家計改善効果も出やすくなります。
次に、目的が薄れている保障を確認します。子どもの教育費に備えていた死亡保障、住宅ローンに備えていた保障、現役時代の収入減に備えていた保障などは、老後には必要性が変わっている可能性があります。
第一に死亡保障、第二に特約を見る
見直しの順番としては、まず死亡保障を確認します。大きな保障が残っている場合は、今の家族構成に合うかを見ます。次に、特約を確認します。主契約は残しながら、不要な特約を外せる場合があるからです。
その後、医療保険やがん保険の重複を見ます。最後に、貯蓄型保険を慎重に確認します。貯蓄型保険は、単純に保険料が高いから減らすのではなく、解約返戻金や将来の受取額も含めて考える必要があります。
夫婦で優先順位をそろえる
保険見直しでは、夫婦の考え方がずれることがあります。夫は保険料を減らしたい、妻は医療保障を残したいというように、重視するポイントが違うこともあります。
その場合は、どちらか一方の意見で決めるのではなく、家計の数字と保障内容を見ながら話し合うことが大切です。毎月いくらまでなら無理なく払えるのか、どの不安を保険で備えたいのかをそろえると、見直し後の納得感が高まります。
相談前に準備しておきたいもの
夫婦で保険を見直す時、保険会社や保険相談窓口に相談する方法もあります。その際は、事前に資料をそろえておくと話が進みやすくなります。
用意したいのは、保険証券、契約内容のお知らせ、保険料の引き落とし明細、解約返戻金の試算書、年金収入と生活費のメモです。夫婦それぞれの契約を一緒に確認できるようにしておきましょう。
解約前提で相談しない
保険料を下げたいと思って相談すると、つい解約を前提に考えてしまうかもしれません。しかし、必要な保障までなくすと、病気や死亡時に困る可能性があります。
相談する時は、解約するかどうかだけでなく、減額、特約の整理、払済保険への変更、契約の継続など複数の選択肢を確認しましょう。特に貯蓄型保険は、解約以外の方法がある場合もあります。
提案をその場で決めない
保険の見直し提案を受けた時は、その場で即決しないことも大切です。保険料が下がるように見えても、保障内容が小さくなっている、払込期間が延びている、解約返戻金の扱いが変わっていることがあります。
夫婦で一度持ち帰り、現在の契約と新しい提案を並べて比較しましょう。分からない点があれば、再度確認してから判断する方が安心です。
夫婦の保険見直しは家計表から始める
夫婦で保険料を払いすぎているかどうかは、保険単体では判断しにくいものです。まずは、年金収入、生活費、医療費、住居費、貯蓄の取り崩し額を確認し、その中で保険料がどれくらいを占めているかを見ましょう。
そのうえで、死亡保障、医療保険、がん保険、特約、貯蓄型保険の順に整理すると、見直しやすくなります。老後の保険見直しは、保険料を下げることだけが目的ではありません。必要な保障を残しながら、家計に合わない固定費を整えることが目的です。
夫婦で保険証券を集め、月額保険料と保障内容を一覧にするだけでも、払いすぎや重複に気づきやすくなります。自己判断で急いで解約せず、必要に応じて相談しながら、老後家計に合う保険の形を考えていきましょう。
出典:公益財団法人生命保険文化センター/公益財団法人生命保険文化センター/公益財団法人生命保険文化センター/公益財団法人生命保険文化センター/厚生労働省/国民生活センター





