年金生活に入ると、毎月の保険料が重く感じられることがあります。生命保険、医療保険、がん保険、貯蓄型保険などを現役時代のまま続けていると、老後の家計に合わなくなることがあります。
ただし、保険料を下げたいからといって、すぐに解約するのは注意が必要です。必要な保障まで失ったり、解約返戻金で損をしたり、新しい保険に入り直せなかったりする場合があります。保険を解約する前には、現在の契約内容と老後の家計を整理し、必要に応じて相談することが大切です。
保険の解約は固定費削減だけで判断しない
老後家計を見直す時、保険料は大きな固定費になりやすい項目です。毎月1万円、2万円、夫婦で3万円以上払っている場合、年金収入の中で負担が目立つことがあります。
保険料を下げれば、毎月の家計は楽になります。しかし、保険は病気、死亡、がん治療、老後資金などに備えるものです。固定費を減らすことだけを優先すると、本来必要だった保障までなくしてしまう可能性があります。
解約すると保障はなくなる
保険を解約すると、原則としてその契約の保障はなくなります。死亡保障を解約すれば、万が一の時に家族へ残せる保険金はなくなります。医療保険を解約すれば、入院や手術の給付金を受け取れなくなります。
今は健康でも、年齢を重ねるほど病気や入院の可能性は高まります。解約後に同じ保障が必要になっても、健康状態や年齢によっては新しい保険に加入できないことがあります。保険料の軽さだけでなく、解約後に何がなくなるのかを確認しましょう。
一度解約すると元に戻せない場合がある
古い保険の中には、現在よりも有利な条件で加入しているものがあります。予定利率が高い貯蓄型保険や、今では同じ条件で入りにくい医療保険などです。
一度解約すると、同じ契約に戻せないことがあります。新しい保険に入り直す場合、年齢が上がっている分、保険料が高くなったり、保障内容が限定されたりする可能性があります。特に60代以降の見直しでは、解約前の確認が重要です。
相談前に現在の保険を一覧にする
保険相談を有効に使うためには、現在の契約内容を整理しておくことが大切です。何に入っているか分からない状態で相談すると、必要な保障と不要な保障の判断がしにくくなります。
まずは、保険証券や契約内容のお知らせを集めましょう。夫婦で保険に入っている場合は、夫と妻それぞれの契約を同じ表に並べると、世帯全体の保険料が見えやすくなります。
確認したい項目
保険会社名、保険の種類、月々の保険料、保険期間、保険料の払込期間、死亡保障額、入院給付金、手術給付金、がん保障、特約、解約返戻金の有無を確認します。
年払いの保険は、12で割って月額に直しましょう。たとえば、年払い12万円の保険は月1万円の固定費として考えます。すべての保険料を月額にすると、老後家計の中で保険料がどれくらい重いかが見えてきます。
契約した目的を思い出す
保険ごとに、なぜ加入したのかも確認します。子どもの教育費に備えるため、住宅ローンに備えるため、配偶者の生活費を守るため、入院費に備えるため、老後資金を準備するためなど、契約には目的があったはずです。
その目的が今も残っているなら、保障を残す意味があります。一方で、子どもが独立した、住宅ローンが終わった、退職して収入構造が変わった場合は、以前と同じ保障が必要とは限りません。
自己判断で解約しない方がよい保険
保険の中には、自己判断で解約すると後悔しやすいものがあります。特に、貯蓄型保険、古い医療保険、死亡保障が大きい保険、特約が複雑な保険は慎重に確認したいところです。
貯蓄型保険は解約返戻金を見る
終身保険、養老保険、個人年金保険などの貯蓄型保険は、解約すると解約返戻金を受け取れる場合があります。ただし、払い込んだ保険料がすべて戻るとは限りません。解約の時期によっては、払込保険料を下回ることがあります。
また、あと少しで保険料の払込が終わる契約を解約すると、これまで続けてきたメリットを十分に活かせない場合があります。解約返戻金、払込期間、満期金、将来受け取れる年金額などを確認してから判断しましょう。
医療保険は入り直しの可否を確認する
医療保険は、健康状態によって加入できるかが変わります。現在治療中の病気がある、過去に入院や手術をした、薬を飲み続けている場合、新しい保険に加入できないことがあります。
保険料を下げたい場合でも、先に今の医療保険を解約するのは避けたいところです。新しい保険に加入できるか、保険料はいくらか、保障内容は今より合っているかを確認してから判断しましょう。
解約以外の選択肢も確認する
保険料を軽くしたい場合、方法は解約だけではありません。契約内容によっては、保障額の減額、特約の解約、払済保険への変更、保険期間の見直しなどができる場合があります。
生命保険文化センターでは、主契約や特約の保障額を減らすことで保険料を安くする方法などを紹介しています。契約全体をなくす前に、負担を軽くしながら保障を残せないか確認することが大切です。
保障額を減らす
死亡保障が大きすぎる場合、保障額を減らすことで保険料を下げられる場合があります。子どもが独立し、住宅ローンも終わっているなら、現役時代と同じ大きな死亡保障が必要かを確認しましょう。
ただし、減額すると受け取れる保険金も減ります。残された配偶者の生活費、葬儀費用、預貯金、遺族年金の可能性などを整理したうえで判断する必要があります。
不要な特約を外す
保険料が高くなっている原因が、主契約ではなく特約にある場合もあります。入院特約、通院特約、災害特約、三大疾病特約、家族特約などが複数ついていると、保険料が大きくなります。
必要性が低くなった特約を外せれば、契約全体を解約せずに保険料を下げられる可能性があります。ただし、外した特約を後から再度付けられない場合もあるため、保険会社に確認してから進めましょう。
払済保険を検討できる場合がある
貯蓄型保険では、以後の保険料の払込みをやめ、その時点の解約返戻金をもとに保障額を小さくして保険を続ける払済保険という方法を選べる場合があります。
払済保険にすると、保険料負担を止められる一方で、保障額は下がり、特約が消えることがあります。すべての契約で使えるわけではないため、現在の保険で選べるか確認が必要です。
保険相談を利用するメリット
保険は、商品名だけでは内容が分かりにくいことがあります。主契約、特約、払込期間、解約返戻金、更新、転換、告知など、確認すべき点が多いため、自分だけで判断するのが難しい場合もあります。
保険相談を利用すると、現在の契約内容を整理し、家計に対して保険料が重すぎないか、保障が重複していないかを確認しやすくなります。特に夫婦で複数の保険に入っている場合は、第三者に一覧化してもらうだけでも見直しのきっかけになります。
家計と保障を同時に見られる
老後の保険見直しでは、保障内容だけでなく家計とのバランスを見る必要があります。毎月の年金収入、生活費、医療費、住居費、預貯金、保険料を並べると、どこまで保険にお金をかけられるかが見えてきます。
保険料を減らすことだけを目的にすると、必要な保障まで削ってしまうことがあります。相談では、残す保障、減らす保障、解約を検討する保障を分けて考えるとよいでしょう。
複数社を比較できる相談もある
保険相談には、特定の保険会社に相談する方法と、複数社の商品を扱う相談窓口を利用する方法があります。現在の契約を確認したいだけなら、まず契約中の保険会社に問い合わせるのも方法です。
新しい保険も含めて比較したい場合は、複数社を扱う無料相談や比較相談を利用すると、選択肢を見やすくなることがあります。ただし、取扱保険会社の範囲や相談員の説明姿勢は窓口によって異なります。提案された商品だけで即決せず、比較内容を持ち帰って確認しましょう。
相談時に注意したいこと
保険相談は便利ですが、相談すれば必ず正解が出るわけではありません。相談先によって提案内容が異なることがありますし、相談の目的を決めずに行くと、新しい保険への加入が中心の話になってしまうこともあります。
解約したいではなく整理したいと伝える
相談する時は、最初から「解約したい」と伝えるよりも、「老後の家計に合うように整理したい」と伝える方がよいでしょう。解約、減額、特約整理、継続、払済保険など、複数の選択肢を比較しやすくなります。
特に貯蓄型保険は、解約返戻金や将来の受取額が関係します。解約前提ではなく、今の契約を残した場合と見直した場合の違いを確認することが大切です。
その場で契約しない
新しい保険を提案された場合、その場で決めないことも大切です。保険料が安くなるように見えても、保障内容が小さくなっている、保険期間が短くなっている、解約返戻金がなくなっていることがあります。
現在の契約と新しい提案を並べ、保険料、保障内容、保険期間、払込期間、解約返戻金、告知の有無を確認しましょう。分からない点があれば、後日あらためて質問してから判断する方が安心です。
告知内容は正確に伝える
新しい保険に申し込む場合、健康状態について告知が必要になることがあります。持病、通院、服薬、過去の手術や入院などを正しく伝えることが大切です。
告知を正しく行わないと、将来の保険金や給付金の支払いに影響する場合があります。相談員に言われたから大丈夫と考えるのではなく、自分で内容を確認し、正確に申告しましょう。
相談前に持っていきたい資料
保険相談をするなら、事前に資料をそろえておくと内容の確認がスムーズです。保険証券、契約内容のお知らせ、保険料の引き落とし明細、解約返戻金の試算書、年金収入と生活費のメモを用意しましょう。
夫婦で見直す場合は、夫婦それぞれの保険資料を持っていくことが大切です。片方の保険だけを見ると、世帯全体の保障や保険料負担が分かりにくくなります。
毎月払える保険料の上限を決める
相談前に、毎月いくらまでなら保険料を払えるかを考えておきましょう。年金収入、生活費、医療費、住居費、貯蓄の取り崩し状況を見て、無理のない上限を決めます。
上限を決めずに相談すると、不安に合わせて保障を増やしすぎることがあります。保険は大切ですが、毎日の生活費を圧迫しない範囲で続けることが重要です。
不安を優先順位で整理する
病気が不安、がんが不安、配偶者の生活費が不安、葬儀費用が不安、介護費が不安など、老後の不安は複数あります。すべてを保険で備えようとすると、保険料が高くなります。
相談前に、どの不安を最も重視するのかを整理しましょう。公的制度や貯蓄で対応できる部分、保険で備えたい部分を分けると、必要な保障を選びやすくなります。
解約前の相談で老後の家計を守る
保険を解約する前に相談すべき理由は、単に新しい保険を探すためではありません。現在の契約を正しく理解し、老後の家計に合う形へ整えるためです。
保険料が重い場合でも、解約以外に、保障額の減額、特約の整理、払済保険への変更などの選択肢がある場合があります。反対に、必要な保障を残した方がよいケースもあります。
老後の保険見直しでは、保険料を下げることと、保障を守ることの両方が大切です。まずは保険証券を集め、毎月の保険料と保障内容を一覧にしましょう。そのうえで、自分だけで判断しにくい契約は、保険会社や保険相談窓口で確認し、納得してから手続きを進めることが安心につながります。





