年金生活に入ってからも、現役時代に契約した生命保険や医療保険をそのまま払い続けている人は少なくありません。保険は万が一の備えとして大切ですが、収入が年金中心になると、毎月の保険料が家計に重くのしかかることがあります。
保険料が高いと感じた時、すぐに解約を考えたくなるかもしれません。しかし、老後の保険見直しでは、先に「何のために入っている保険なのか」を確認することが大切です。保障を減らしてよいものと、残した方がよいものを分けて考えることで、家計と保障のバランスを取りやすくなります。
年金生活では保険料の負担感が変わりやすい
現役時代は、毎月の給与や賞与があり、多少保険料が高くても支払えていた人もいるでしょう。しかし、年金生活になると収入の見通しが大きく変わります。収入が一定になりやすい一方で、食費、光熱費、医療費、通信費、住居費などの支出は続きます。
そのため、現役時代と同じ保険料を払い続けていると、家計の中で保険料の割合が高く感じられることがあります。特に夫婦で複数の保険に入っている場合、月ごとの保険料を合計すると、思った以上の固定費になっていることがあります。
保険料は自動引き落としで見落としやすい
保険料は、銀行口座やクレジットカードから自動で引き落とされていることが多く、毎月の負担として意識しにくい支出です。契約した当初は必要だった保障でも、時間が経つと生活状況に合わなくなっていることがあります。
子どもが独立した、住宅ローンを完済した、退職して収入構造が変わった、夫婦だけの生活になったなど、家族構成やお金の流れが変われば、必要な保障も変わります。保険料を払い続けるべきかを考える前に、まず現在の契約内容を見直すことが重要です。
平均額より自分の家計で判断する
生命保険文化センターの2024年度調査では、生命保険の世帯年間払込保険料の平均は35.3万円とされています。月に直すと約3万円に近い金額です。ただし、これはあくまで平均であり、家族構成や加入している保険の種類によって差があります。
大切なのは、平均より多いか少ないかではありません。自分の年金収入と生活費に対して、保険料が無理なく払える範囲に収まっているかです。貯金を取り崩して保険料を払っている、食費や医療費を削ってまで保険料を優先している場合は、見直しを考えるタイミングです。
見直し前に保険証券を集める
保険を見直す時は、まず加入している保険をすべて把握することから始めます。保険証券、契約内容のお知らせ、保険会社から届く年次通知、引き落とし明細などを集めて、一覧にしましょう。
夫婦で保険に入っている場合は、夫と妻それぞれの契約を分けて確認します。生命保険、医療保険、がん保険、個人年金保険、貯蓄型保険、共済などが混ざっていることもあります。
確認したい項目
一覧にする時は、保険会社名、保険の種類、毎月の保険料、保険期間、保険料の払込期間、死亡保障の金額、入院給付金、手術給付金、がん保障、特約の有無、解約返戻金の有無を確認します。
年払いの契約がある場合は、12で割って月額に直すと家計への影響が分かりやすくなります。たとえば、年払い12万円の保険は、月1万円の固定費として考えます。すべての保険料を月額換算すると、保険が家計にどれくらい影響しているか見えやすくなります。
契約目的を思い出す
保険ごとに、なぜ加入したのかも確認しましょう。家族の生活費を守るため、子どもの教育費に備えるため、入院費に備えるため、老後資金を準備するためなど、契約には目的があったはずです。
その目的が今も残っているなら、保険を続ける意味があります。一方で、子どもの独立や住宅ローン完済によって目的が薄れている場合は、保障額を減らす、特約を外す、別の備えに切り替えるなどの選択肢を考えられます。
死亡保障は家族の生活費から考える
現役時代に加入した生命保険では、死亡保障が大きく設定されていることがあります。これは、万が一の時に家族の生活費、住宅ローン、教育費などを守るためです。
しかし、年金生活に入る頃には、子どもが独立していたり、住宅ローンが終わっていたりすることがあります。その場合、現役時代と同じ大きな死亡保障が必要かどうかを確認する余地があります。
配偶者の生活費を確認する
死亡保障を考える時は、まず残された配偶者の生活費を見ます。配偶者自身の年金、遺族年金の可能性、預貯金、住まいの状況、子どもからの支援の有無などを整理します。
死亡保障をすべて不要と考えるのではなく、葬儀費用や当面の生活費としてどれくらい必要かを考えることが大切です。必要額が以前より小さくなっているなら、保障額を減らして保険料を下げられる可能性があります。
大きすぎる保障は保険料を重くする
死亡保障が大きいほど、一般的には保険料も高くなりやすくなります。子どもが独立し、配偶者の生活費もある程度見通せる状態であれば、大きすぎる保障を残す必要性は下がることがあります。
ただし、持病がある人や高齢になってから新しい保険に入り直す場合、同じ条件で加入できないこともあります。現在の保険を解約する前に、減額や特約の見直しで対応できないかを確認しましょう。
医療保険は公的制度と貯蓄も含めて考える
年齢を重ねると、病気や入院への不安は大きくなります。そのため、医療保険を残したいと考える人は多いでしょう。医療保険は、入院日額、手術給付金、通院保障、先進医療特約など、契約によって内容が異なります。
ただし、医療費については公的医療保険制度や高額療養費制度もあります。厚生労働省は、高額療養費制度について、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1カ月で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度と説明しています。
入院日額が今の医療事情に合うか
古い医療保険では、長期入院を前提にした保障内容になっていることがあります。しかし、近年は入院日数が短くなり、通院治療や日帰り手術が増えている分野もあります。
そのため、入院日額だけを見て安心するのではなく、手術給付金、通院保障、がん治療への備えなど、自分が不安に感じる部分と合っているかを確認しましょう。保障内容が古くなっている場合は、現在の医療事情に合う保険と比較することも大切です。
貯蓄で対応できる範囲を確認する
医療保険は安心材料になりますが、すべてを保険で備えようとすると保険料が高くなります。預貯金で対応できる範囲、公的制度で負担が抑えられる範囲、保険で備えたい範囲を分けて考えましょう。
たとえば、短期入院や数万円程度の自己負担であれば貯蓄で対応し、大きな支出や長期治療の不安を保険で補うという考え方もあります。保険は貯蓄の代わりではなく、家計で対応しにくいリスクに備えるものとして整理すると判断しやすくなります。
特約の重複を確認する
保険料が高くなっている原因として、特約の付けすぎがあります。入院特約、通院特約、災害特約、三大疾病特約、先進医療特約など、契約時にさまざまな特約を付けている場合があります。
特約は役立つこともありますが、複数の保険で同じような保障が重なっていると、保険料の負担が大きくなります。夫婦で同じ保障を別々に厚く持っている場合も、世帯全体で見ると払いすぎになっていることがあります。
夫婦それぞれの保障を並べて見る
夫の保険、妻の保険を別々に見るだけでは、重複に気づきにくくなります。夫婦それぞれの医療保険、がん保険、死亡保障、特約を並べて、世帯全体でどの保障がどれくらいあるかを確認しましょう。
どちらか一方に収入や家計管理が偏っている場合は、死亡保障の必要性も変わります。夫婦それぞれの年金額、預貯金、住まい、子どもの支援の有無を合わせて考えると、残すべき保障が見えやすくなります。
不要な特約だけ外せる場合もある
保険料を下げたい時、必ずしも保険そのものを解約する必要はありません。生命保険文化センターでは、保障内容を変更する方法として、保障額の減額などを紹介しています。主契約や特約の保障額を減らすことで、減らした分の保険料が安くなる場合があります。
契約内容によっては、不要になった特約を外す、保障額を下げる、払込方法を変えるなどの方法が取れる場合があります。どの方法が使えるかは保険会社や商品によって異なるため、契約先に確認しましょう。
新しい保険に入り直す時の注意点
保険を見直すと、新しい保険に入り直す選択肢が出てくることがあります。新しい保険の方が、現在の医療事情や希望する保障に合っている場合もあります。
一方で、60代以降に新規加入すると、年齢によって保険料が高くなりやすく、健康状態によっては加入できないこともあります。現在の保険を解約してから新しい保険を探すと、保障が途切れるリスクがあります。
解約前に加入可否を確認する
新しい保険へ切り替える場合は、先に加入できるか、保険料はいくらになるか、保障内容は本当に改善するかを確認しましょう。告知内容によっては、条件付きの加入になることもあります。
現在の保険には戻れない場合があります。特に、昔加入した保険で予定利率が高い貯蓄型保険や、現在より有利な条件が残っている契約は、解約前に慎重に確認したいところです。
転換や乗り換えは内容を比べる
保険の見直しでは、現在の契約を活用して新しい契約に変更する転換制度が提案されることもあります。生命保険文化センターは、転換前と転換後で内容がどのように変わるのか、よく確認し納得したうえで契約することが大切と説明しています。
保険料が下がるように見えても、保障内容が小さくなっている、払込期間が延びている、解約返戻金の扱いが変わっていることがあります。提案書を見ただけで判断せず、現在の契約と新しい契約を並べて比較しましょう。
保険料を払い続けるかは順番に確認する
年金生活で保険料を払い続けるべきかどうかは、単に高い、安いだけでは決められません。必要な保障を残しながら、家計に合わない部分を減らすことが大切です。
まずは、加入中の保険をすべて書き出し、毎月の保険料総額を確認します。次に、死亡保障、医療保障、がん保障、貯蓄性のある保険、特約を分けて、今も必要かを見ていきます。
保険料が重いからといって、自己判断で一気に解約すると、必要な保障まで失う可能性があります。反対に、内容を理解しないまま払い続けると、老後の家計を圧迫します。年金生活では、保険を残すか減らすかを冷静に整理し、必要に応じて保険会社や中立的な相談窓口で確認しながら進めることが安心につながります。
出典:公益財団法人生命保険文化センター/公益財団法人生命保険文化センター/公益財団法人生命保険文化センター/公益財団法人生命保険文化センター/厚生労働省/国民生活センター





