60代になると、現役時代とは家計の状況が変わります。収入は年金中心になり、子どもの独立や住宅ローンの完済などによって、必要な保障も変わっていきます。
一方で、医療費や介護、配偶者の生活費への不安は大きくなりやすい時期です。保険をすべて減らせばよいわけではありません。60代からの保険見直しでは、残したい保険と減らせる保険を分けて考えることが大切です。
60代の保険は現役時代のままでよいとは限らない
60代の保険見直しで最初に考えたいのは、加入時と今の生活が同じではないという点です。現役時代は、家族の生活費、住宅ローン、子どもの教育費に備えるために、大きな死亡保障が必要だった人も多いでしょう。
しかし、退職後は収入や支出の形が変わります。子どもが独立し、夫婦だけの生活になっている場合、以前と同じ保障額が必要とは限りません。反対に、医療費や介護費への備えは、以前より関心が高くなることがあります。
保険を減らす前に目的を確認する
保険料を減らしたいと感じた時、すぐに解約を考えるのは避けたいところです。まずは、それぞれの保険が何に備えるものなのかを確認しましょう。死亡保障なのか、医療保障なのか、がん保障なのか、老後資金づくりを兼ねた貯蓄型保険なのかによって、判断の仕方は変わります。
保険は、家計に合わない部分を調整することが目的です。必要な保障までなくしてしまうと、病気や死亡時に家族が困る可能性があります。減らす保険と残す保険を分けるためにも、まず契約内容を見える形にすることが大切です。
保険料の合計額を世帯で見る
夫婦で保険に入っている場合は、1人ずつではなく世帯全体で保険料を確認しましょう。夫の生命保険、妻の医療保険、がん保険、個人年金保険、共済などを合わせると、毎月の負担が大きくなっていることがあります。
年払いの保険がある場合は、12で割って月額に直します。毎月の年金収入に対して保険料がどれくらいを占めているかを見ると、家計への重さがわかりやすくなります。
死亡保障は減らせる可能性がある
60代で見直しやすいのが死亡保障です。死亡保障は、万が一の時に残された家族の生活費や教育費、住宅ローン、葬儀費用などに備えるものです。
現役時代に大きな死亡保障を用意していた人でも、子どもが独立し、住宅ローンが終わっている場合は、必要額が小さくなっていることがあります。大きな保障を残したままだと、その分だけ保険料が重くなりやすくなります。
残された配偶者の生活費を考える
死亡保障を減らしてよいかを考える時は、配偶者の生活を確認します。配偶者自身の年金、遺族年金の可能性、預貯金、住まいの状況、子どもからの支援の有無などを整理します。
配偶者が生活に困らない見通しがあるなら、大きな死亡保障を残す必要性は下がることがあります。一方で、配偶者の年金が少ない、貯蓄が少ない、住居費がかかる場合は、一定の死亡保障を残す意味があります。
葬儀費用や当面の生活費は別に考える
死亡保障を減らす場合でも、葬儀費用や当面の生活費までゼロにしてよいとは限りません。大きな死亡保障は不要でも、残された家族がすぐに使えるお金を用意しておくことは大切です。
保険で備えるのか、預貯金で備えるのか、家族で話し合っておくと判断しやすくなります。死亡保障は、金額が大きいほど安心というより、今の家族状況に合う金額かどうかが重要です。
医療保険は公的制度と貯蓄を踏まえて考える
60代になると、入院や手術への不安が大きくなります。そのため、医療保険を残したいと考える人は多いでしょう。医療保険は、入院日額、手術給付金、通院保障、先進医療特約など、契約によって内容が異なります。
ただし、医療費については公的医療保険制度があります。高額療養費制度では、1カ月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合、超えた分が支給される仕組みがあります。民間の医療保険は、公的制度で足りない部分を補うものとして考えると整理しやすくなります。
入院日額だけで判断しない
古い医療保険では、長期入院を前提にした内容になっている場合があります。しかし、現在は病気によっては入院期間が短くなり、通院治療や日帰り手術が増えているケースもあります。
入院日額が高いか低いかだけではなく、手術給付金、通院保障、がん治療への備えなど、今の不安に合っているかを確認しましょう。保障内容が古いと感じる場合は、現在の医療事情に合う保険と比べることも大切です。
貯蓄で払える範囲を確認する
医療保険を厚くすると安心感は増えますが、その分保険料も重くなります。短期入院や数万円程度の支払いなら貯蓄で対応できる人もいます。一方で、長期治療や収入減が心配な人は、保険で備える意味があります。
医療保険を残すか減らすかは、預貯金、公的制度、家族の支援、毎月の保険料を合わせて考えます。保険だけで不安をすべて埋めようとすると、老後家計を圧迫しやすくなります。
がん保険は治療への不安で判断する
がん保険は、がんと診断された時や治療を受けた時に給付金を受け取れる保険です。60代では、がんへの不安から残したいと考える人も多いでしょう。
一方で、がん保険にも古い契約と新しい契約があります。入院給付が中心のもの、診断給付金があるもの、通院治療に対応しているものなど、内容に違いがあります。
治療内容の変化に合っているか
がん治療では、入院だけでなく通院で治療を続けるケースもあります。そのため、古いがん保険を持っている人は、入院中心の保障になっていないかを確認したいところです。
診断給付金があるか、通院治療や抗がん剤治療に対応しているか、給付の条件はどうなっているかを見ておきましょう。保険料が高いのに、今の治療への備えとして使いにくい内容であれば、見直しの候補になります。
医療保険との重複も確認する
医療保険にがん特約が付いている場合、別のがん保険と保障が重なっていることがあります。重複していても意味がある場合はありますが、保険料の負担が大きいなら確認が必要です。
がんへの備えを厚くしたいのか、医療保険全体で備えたいのか、目的を分けて考えると整理しやすくなります。
貯蓄型保険は安易に解約しない
貯蓄型保険は、保障と貯蓄の性格を持つ保険です。終身保険、養老保険、個人年金保険などが該当することがあります。老後家計で保険料が重いと感じた時、貯蓄型保険を解約したくなる人もいるかもしれません。
しかし、貯蓄型保険は解約のタイミングによって、解約返戻金が払込保険料を下回ることがあります。古い契約では、現在より条件がよい場合もあります。短絡的に解約するのではなく、現在の価値と将来受け取れる金額を確認しましょう。
解約返戻金と払込期間を確認する
貯蓄型保険を見直す時は、解約返戻金、満期保険金、保険料の払込期間、保障内容を確認します。あと少しで払込が終わる保険を解約すると、長く続けてきた意味が薄れてしまうことがあります。
一方で、保険料が重く、今後も払い続けるのが難しい場合は、減額や払済保険などの方法を検討できる場合があります。契約によって選択肢は異なるため、保険会社に確認しましょう。
貯蓄と保障を分けて考える
貯蓄型保険は、貯蓄と保障が一体になっています。そのため、保険料が高く見えても、単純に掛け捨ての保険と比べることはできません。
老後資金として残したいのか、死亡保障として残したいのか、医療費や介護費に備えたいのかを整理しましょう。目的があいまいなまま続けると、家計に合う判断がしにくくなります。
減らせる保険は特約や保障額から見る
保険料を軽くしたい時、すぐに契約全体を解約する必要はありません。生命保険文化センターでは、保険金の減額や特約の解約など、保障を小さくして保険料負担を軽くする方法を紹介しています。
主契約を残しながら不要な特約を外せる場合や、死亡保障額を下げられる場合もあります。保険料が高い原因がどこにあるのかを確認すると、必要な保障を残しながら負担を下げられる可能性があります。
重複している保障を探す
夫婦それぞれで医療保険やがん保険に入っている場合、似た保障が重なっていることがあります。勤務先の団体保険、共済、クレジットカード付帯の補償なども含めると、自分で思っている以上に保障が重複している場合があります。
重複がすべて悪いわけではありませんが、保険料を減らしたい時は、優先して確認したい部分です。残す保障、薄くする保障、なくしても困りにくい保障に分けて考えましょう。
新規加入は保険料と健康状態に注意する
60代から新しく保険に入る場合、年齢によって保険料が高くなりやすく、健康状態によっては加入できないことがあります。現在の保険を解約してから新しい保険を探すと、保障が途切れる可能性があります。
新しい保険に切り替える場合は、加入できるか、保険料はいくらか、保障内容は本当に今より合っているかを確認してから判断しましょう。
60代の保険見直しは残す順番を決める
60代からの保険見直しでは、保険を減らすことだけを目的にしないことが大切です。死亡保障は家族構成によって減らせる可能性があります。医療保険やがん保険は、公的制度や貯蓄を踏まえて残す範囲を考えます。貯蓄型保険は、解約返戻金や払込期間を確認してから判断します。
大切なのは、必要な保障を残しながら、家計に合わない保険料を整えることです。まずは保険証券を集め、保険料、保障内容、保険期間、払込期間を一覧にしましょう。そのうえで、死亡保障、医療保障、がん保障、貯蓄型保険、特約に分けて確認すると、見直しの方向が見えやすくなります。
自己判断で一気に解約すると、必要な保障まで失うことがあります。迷う場合は、保険会社や保険相談窓口で現在の契約内容を確認し、老後の家計と保障の両方に合う形を考えることが安心につながります。
出典:厚生労働省/公益財団法人生命保険文化センター/公益財団法人生命保険文化センター/公益財団法人生命保険文化センター/国民生活センター





