年金生活に入ると、病気や入院にかかるお金が不安になりやすくなります。収入が年金中心になる一方で、通院、薬代、検査、入院などの支出が増える可能性があるからです。

ただし、医療費が不安だからといって、医療保険を増やせば安心とは限りません。公的医療保険や高額療養費制度で備えられる部分もあります。大切なのは、今の医療保険が老後の家計と不安に合っているかを確認することです。

年金生活では医療費への不安が大きくなりやすい

60代以降になると、健康診断で指摘を受けたり、通院が増えたりする人もいます。若い頃よりも、入院や手術を身近に感じる機会が増えるため、医療保険を残しておきたいと考えるのは自然です。

一方で、年金生活では毎月の収入が大きく増えにくくなります。医療費に備えるための保険料が重くなり、食費や光熱費、日用品費を圧迫しているなら、見直しを考えるタイミングです。

保険料を払い続けることも固定費になる

医療保険は、入院や手術の時に給付金を受け取れる安心感があります。しかし、毎月の保険料は固定費です。使う月がなくても支払いは続きます。

年金生活では、通信費や保険料、住宅関連費などの固定費を抑えることが家計の安定につながります。医療保険も例外ではありません。必要な保障を残しながら、払いすぎていないかを確認することが大切です。

不安だけで保障を増やすと家計を圧迫する

病気が心配だからといって、入院保障、通院保障、がん特約、先進医療特約などを次々に足すと、保険料が高くなります。不安をすべて保険で埋めようとすると、老後の生活費が苦しくなることがあります。

医療保険は、すべての医療費をまかなうためではなく、家計で対応しにくい支出に備えるものとして考えると整理しやすくなります。

まず公的医療制度を確認する

医療保険を見直す前に、公的医療制度でどこまで備えられるかを確認しましょう。日本では、公的医療保険によって医療機関での自己負担割合が一定程度に抑えられています。

さらに、医療費が高額になった場合には、高額療養費制度があります。これは、1カ月の医療費の自己負担額が上限を超えた場合、超えた分が支給される制度です。上限額は年齢や所得によって異なります。

高額療養費制度で自己負担に上限がある

高額療養費制度があるため、入院や手術で医療費が高くなったとしても、自己負担が青天井に増えるわけではありません。もちろん、所得区分や年齢によって上限額は変わりますし、入院時の食事代や差額ベッド代など、制度の対象外となる費用もあります。

そのため、医療保険を考える時は、公的制度で抑えられる医療費と、自己負担になりやすい費用を分けて考える必要があります。公的制度を知らないまま民間保険だけで備えようとすると、保険料が過大になることがあります。

差額ベッド代や雑費は別に考える

入院時には、医療費以外にも費用がかかることがあります。差額ベッド代、入院中の日用品、交通費、家族の付き添いにかかる費用などです。これらは公的医療保険や高額療養費制度でカバーされない場合があります。

医療保険の入院給付金は、こうした周辺費用への備えとして役立つことがあります。単に入院日額が高いか低いかではなく、実際に何に使うお金として残したいのかを考えると判断しやすくなります。

医療保険を見直すタイミング

医療保険は、加入したまま放置しやすい保険です。しかし、年齢、家計、医療事情、家族構成が変われば、必要な保障も変わります。以下のような時は、見直しを考えるきっかけになります。

年金生活に入り保険料が重くなった時

退職後に収入が年金中心になると、現役時代と同じ保険料でも負担感が変わります。毎月の保険料を払うために貯金を取り崩している場合は、今の保障が家計に合っているかを確認しましょう。

保険料を下げたい場合でも、すぐに解約する必要はありません。入院日額を下げる、不要な特約を外す、保障内容を整理するなど、契約によっては複数の方法があります。

古い医療保険を長く続けている時

昔加入した医療保険は、長期入院を前提にした保障内容になっている場合があります。一方で、現在は病気によっては入院日数が短くなり、通院治療や日帰り手術が選ばれることもあります。

古い保険を持っている人は、入院日額だけでなく、手術給付金、通院保障、先進医療特約、がん治療への備えなどを確認しましょう。今の医療事情に合っていない場合は、見直しの候補になります。

夫婦で保障が重複している時

夫婦それぞれが医療保険やがん保険に加入している場合、似たような保障が重なっていることがあります。重複が必ず悪いわけではありませんが、保険料が家計を圧迫しているなら確認したいポイントです。

夫婦で保険を整理する時は、1人ずつではなく世帯全体で見ます。夫の入院保障、妻の入院保障、がん特約、先進医療特約などを並べると、残すべき保障と減らせる保障が見えやすくなります。

入院保障は日額だけで判断しない

医療保険を見直す時、入院日額をいくらにするかは気になるポイントです。日額5,000円、1万円などの保障があると安心に感じますが、日額だけで判断すると、本当に必要な保障が見えにくくなります。

確認したいのは、1回の入院で何日まで保障されるのか、手術給付金はいくらか、日帰り入院や短期入院に対応しているか、通院治療への保障があるかです。

短期入院でも給付されるか

近年は、病気や手術の種類によっては入院期間が短くなることがあります。古い医療保険では、一定日数以上の入院でないと給付対象にならない契約もあります。

短期入院や日帰り入院に対応しているかどうかは、現在の医療保険を確認するうえで重要です。保険料を払い続けていても、必要な時に思ったほど給付を受けられない内容であれば、見直しを検討する余地があります。

通院治療への備えも確認する

病気によっては、入院よりも通院で治療を続ける期間が長くなることがあります。特にがん治療では、手術後の通院、抗がん剤治療、放射線治療などが続く場合があります。

医療保険やがん保険を見直す時は、入院だけでなく通院治療に対応しているかも確認しましょう。入院給付は手厚いのに、通院への備えが薄い場合、今の不安に合っていない可能性があります。

医療保険を減らす時の注意点

医療保険の保険料を下げたい場合、解約だけが方法ではありません。契約内容によっては、特約を外す、入院日額を下げる、保障期間を見直すなどの方法があります。

ただし、年齢を重ねてから新しい保険に入り直す場合、健康状態によっては加入できないことがあります。現在の保険を解約してから新しい保険を探すと、保障が途切れる可能性があるため注意が必要です。

健康状態によって入り直せないことがある

医療保険に加入する時は、一般的に健康状態の告知が必要です。持病や過去の入院歴、服薬状況によっては、加入できない、条件付きになる、保険料が高くなることがあります。

今の保険を解約したあとに、同じような保障へ入り直せるとは限りません。見直しをする時は、先に新しい保険の加入可否や保険料を確認してから判断しましょう。

特約だけ外せるか確認する

保険料が高い原因が特約にある場合、特約だけを外すことで負担を下げられる可能性があります。たとえば、重複している通院特約や、必要性が低くなった特約がないかを確認します。

契約によっては、特約を外すと再度付けられない場合もあります。保険会社に確認し、外した場合に保障内容と保険料がどう変わるかを見てから判断しましょう。

医療費不安は保険と貯蓄を分けて備える

年金生活で医療費が不安な時は、民間の医療保険だけに頼るのではなく、公的制度、預貯金、家族の支援、保険を組み合わせて考えることが大切です。

短期入院や少額の自己負担は貯蓄で対応し、大きな支出や長期治療への不安を保険で補うという考え方もあります。どこまでを保険で備え、どこからを貯蓄で払うのかを決めると、必要以上に保険料を増やさずに済みます。

生活費を削りすぎない範囲で備える

医療費への備えは大切ですが、保険料を払うために毎月の生活費を削りすぎるのは本末転倒です。食費、光熱費、住居費、通信費、日用品費など、日々の暮らしに必要なお金も守る必要があります。

保険料を払うことで貯金が毎月減っている場合は、保障内容を確認しましょう。医療保険は安心を買うものですが、老後家計に合う金額で続けることが大切です。

迷う場合は現在の契約内容を相談する

医療保険は、契約内容や給付条件が分かりにくいことがあります。保険証券を見ても判断できない場合は、保険会社や保険相談窓口で現在の契約内容を確認しましょう。

相談する時は、保険証券、契約内容のお知らせ、保険料の支払い状況、現在の通院状況、家計の保険料負担を整理しておくとスムーズです。解約を前提にするのではなく、残す、減らす、切り替えるという選択肢を比較することが大切です。

医療保険は不安と家計のバランスで見直す

年金生活では、医療費への不安が大きくなりやすい一方で、毎月の保険料も固定費として家計に影響します。医療保険を残すべきか減らすべきかは、公的医療制度、貯蓄、健康状態、家族構成、保険料負担を合わせて判断する必要があります。

まずは、高額療養費制度などの公的制度で備えられる部分を確認しましょう。そのうえで、入院時の差額ベッド代、雑費、通院治療、家族の交通費など、自己負担になりやすい部分を医療保険で補うかを考えます。

保険料が重い、古い保険を長く続けている、夫婦で保障が重複している、通院治療への備えが不安という場合は、医療保険を見直すタイミングです。自己判断で解約する前に、現在の保障内容と家計への負担を整理し、老後の暮らしに合う形へ整えていきましょう。

出典:厚生労働省公益財団法人生命保険文化センター公益財団法人生命保険文化センター国民生活センター